エッセイ みどりの丘 〜くらしに「ありがとう」〜

施設長 大塚美智子が綴ります

花を愛でる

vol.01

待ちに待った桜が咲いた
今年は花冷えもあり楽しめた期間が長かった 
それでも終わった後は寂しい
ほどなくラウンジの外をみんなが見ている
面会のご家族様も見ている
視線の先にあるのはつつじ
見事な咲きっぷり
美しいピンク
「すてき、綺麗ねー」
感嘆の声があがる
花を愛でる
これ以上ぴったりな言葉は見つからない


あなたの歩みは私たちの歩み

vol.02

入居され14年
豪快な笑い声はいつも周りを明るくした
前向きな方だった
利き手が麻痺なのに
習字も、手芸も
エプロンたたみのお手伝いも
何でも挑戦した 
何でもできた
学ぶべきことが多かった
お別れは突然だった
あの笑い声を聞くことは叶わなくなった
長い間、ありがとうございました
お世話になりました

2025年

vol.03


団塊の世代が後期高齢者になる2025年
大変なことになると
心配されてきたが
その時が来た
一番の問題は働き手がいないこと
介護だけではなくどの仕事も足りない
その反面、10年後、20年後に
なくなる仕事もたくさんある
AIができること
AIができないこと
介護はなくならない仕事に分類された
2025年、何事もなかったように
毎日が過ぎていく


自給率100%

vol.04

若者や子供がお米を食べないと
コメ離れが叫ばれていたが
いつの間にかお米が消えた
あればラッキー
高くても買う
ないと困るから多く買う
みんながそうするから
いつまでも品薄
いつまでも高い
家計のため食べない工夫も必要になった
コメ離れで食べない
コメ不足で食べない
コメが高くて食べない
自給率100%のお米が泣いている



頼りにされて

vol.05

肺炎になり入院された
もともと食が細かった
顔を見ながら
声をかけながら
何とか食べて頂いた
スタッフが頼りだった
入院で更に食べなくなった
点滴が頼りになった
「うちに戻れば食べるのに」
頼りにされていたスタッフは
退院を心待ちにした



母と娘

vol.06

お母様も入居されていた
誰からも愛された
名前の通り周りを幸せにしてくれた
看取りを希望され
104歳の大往生だった
お礼にと娘様はボランティアに参加された
まもなく病が再発、予後が宣告され
看取りでの入居となった
往診医と相談しながら痛みを取り
穏やかな日を願った
お好きなトマトを栽培した
ご自身で収穫したトマトは食べた
夏の終わり
静かにお母様の元へ


やったね!

vol.07

SDGs活動はつづく
今年度はおむつ削減に挑んだ
施設ではおむつは当たり前
濡れてない方もいるよね?
布パンツにしてみる?
見直しが行われ20人が対象になった
削減できたおむつは
「12,240枚」
環境に貢献したとは言えないけれど
その人らしい暮らしには
フィットしたと思う
やったね!


愛は地球を救う

vol.08

24時間テレビの福祉車両に
申し込み続けて14年
ついに当選した
日本には古くから
「おたがいさま」と助け合いの風習がある
この「おたがいさま」の心は
生まれつき備わっているそう
また日本には「おかげさま」と
人に感謝する風習もある
この2つ心を持ち合わせていれば
大抵のことはうまくいくらしい
全国のみなさまの助け合いの気持ちを
「おかげさま」と感謝しながら走りま~す
日本に生まれて良かった!



チョコレート2000個

vol.09

笑顔は脳を刺激し
チョコレート2000個分の
効果があるらしい
みどりの丘が大切にしているのは
入居者様の笑顔
自分のことができなくなり
介護が必要になっても
笑顔でいてほしい
年を重ねても
幸せを感じてほしい
笑顔あふれるみどりの丘には
チョコレート2000個分の
暮らしがあります


母の日

vol.10

5月の第2日曜日は母の日
その日は面会者があふれる
  予定の枠はとうに超えている
  面会にいらしたお子様は
息子の顔になり
娘の顔になる
  お迎えする入居者様は
母の顔になる
「お母さん、ありがとう」
  感謝の言葉を伝える
いつもの母の日が戻った


しあわせの青い鳥

vol.11

フロアでの何気ない会話が
何よりの楽しみ
ある日お邪魔すると
「青い鳥がきた!」と
握った手を離さない入居様
「青い鳥ってなんですか?」と伺うと
「お話すると幸せなの、だから青い鳥」
こんなこと言われたら
嬉しくて涙が出そう
いえ、いえ
みなさんこそが
青い鳥です


開設して15年目

vol.10

開設15年を迎えた
世の中は変わった
ガソリン、食品、光熱費
軒並みの値上がり
98円で売られていた卵は
400円近くなった
お米も倍になった
こんなに変わるとは
思ってもいなかった
物の価値は変わっても
人の心は変わらない
優しく、温かく
思いやりのある心を大切に
介護に必要なことは	
変わらない
変えてはいけない

施設長  大塚美智子
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